前身の小樽高等商業学校の時代から、本学は「北の外国語学校」として全国にその名を知られてきました。商学の教育機関でありながら、小林多喜二、伊藤整といった卓抜した文学者を輩出できたのも、実学のみに偏らない教養教育の重視、特に全授業の三分の一が語学であったという、文芸・文化の色濃く薫る校風があったればこその事でした。
実用と文化との調和のうえに立つ外国語教育の伝統は、現在、言語センターに引き継がれています。大学設置基準の緩和をうけ、他大学の多くが一般教育や語学を大幅に削減する中、本学は逆に外国語教育の拡充を打ち出しました。これが時の文部省に認められ、1991年10月、言語センターは省令施設として誕生しました。
その1991年は、多国籍軍による対イラク湾岸戦争に始まり、ソビエト連邦の崩壊で幕を閉じた激動の一年でした。今現在にあっても、例えば EU の大いなる夢が Brexit に揺れているように、対話や交流とはむしろ対立や衝突であるようです。言語センターの研究対象は、そういった「異言語・異文化間コミュニケーション・ギャップ」に他なりません。
言語センターが「多言語主義」を掲げる理由もここにあります。価値観を異にする文化を理解しようとすれば、そこに向ける視線を相対化する必要があります。その覗き見る窓こそが言語です。日本語だけでは足りません。英語を加えても、まだ足りません。もうひとつ別の視座があって初めて、異文化はその多元的、複層的な姿を見せ始めるのです。
現在、言語センターは「英、独、仏、中、西、露、韓」の7外国語を教授しています。また、留学生向けの日本語教育の他、外国語教授法の研究、海外留学に向けた学習支援、ICT教室やライブラリーの整備にも努め、最近では online 学習と対面授業を融合した Blended learning にも取り組み、21世紀の国際社会に対応した外国語教育を目指しています。
Welcome to the Centre for Language Studies
新入生の皆さん、小樽商科大学へようこそ。
赤レンガの正門から入ると、左手の広場に立つ渡邊龍聖先生が皆さんを迎えてくれます。本学の初代校長で、近寄って読む碑文には「実学、語学、品格」とあります。これは1911年に建学して以来、今に続く本学の教育理念です。
商業活動の実際を学ぶのですから、「実学」重視は当然です。また「品格」を欠いた金儲け主義は、本学の教育するところではありません。では、商科大学だというのに、何故、「語学」なのでしょうか?
古くは地中海交易のフェニキア商人、シルクロードを巡ったキャラバン隊、あるいは香辛料を求めて新大陸を発見した大航海時代・・・。商業の栄えるところ、常に異文化との出会いがありました。
皆さんが4年後に巣立っていく先も、国境を越えて「ヒト、モノ、カネ」が劇的に移動するグローバル社会です。そこで必要となるのは「異文化間コミュニケーション」に他ならず、だからこそ「語学」なのです。
Invitation to Foreign Languages
How to learn
foreign languages
国際社会の多様性、複層性に対応し、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、スペイン語、ロシア語、韓国語の7言語を教授します。また、留学生向けには日本語関連科目も用意しています。
7外国語から2つを選び、1年次ではそれぞれ週2回、計8単位を履修します。2年次では、一方は週2回、他方は週1回の授業を受け、それぞれ4単位、2単位の計6単位を履修します。卒業するには計14単位が必修です。
英語は入学時のプレイスメントテストに基づく「基礎」「標準」「発展」のレベル別クラス編成です。英語以外の外国語は、入門から基礎、標準、発展への積み上げ方式です。いずれも安易な単位認定は行いません。
創立以来、本学は積極的に海外からの外国人教師を招聘してきました。現在でも、英語の1/2が外国人教員による授業であり、英語以外の外国語でも、ネイティヴ教員の割合は1/3に及びます(非常勤講師を含む)。
1,2年次のいわゆる「語学」に加え、より深く外国語を理解するためのオプション科目が用意されています。3,4年次配当の上級外国語のクラスもあり、すべての外国語が入学から卒業まで一貫して学べます。
実用と文化との調和のうえに立つ外国語教育を目指します。言葉の4技能「聞く、話す、読む、書く」の習得に加えて、その言語の有する社会的背景や文化的特徴も合わせて理解していきます。
Multimedia library
マルチメディア・ライブラリーは外国語学習を支援する総合視聴覚施設で、AV 機器や PC を備えた個人ブースで資料の視聴や自習ができます。
所蔵している資料は、語学教材や問題集はもとより、映画や音楽、テレビ・ラジオ講座、英字新聞、速読用の洋書など、豊富なラインナップです。
場所 | 2号館4階 言語センター内 |
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開室 | 平日 8:30~17:00(夏季・冬季休業期間を含む) |
現代のビジネスシーンにおいて、英語はもはや必須アイテムです。ビジネス英語の検定試験に TOEIC がありますが、多くの企業が採用や昇進で参考とするこのテストは、今やキャリア形成の第一歩ともいえます。
本学では e-learning によるTOEIC対策授業と IP テスト受験 が必須です。やはり必要性がそうさせるのか、平均点は年々向上し、海外ビジネスで通用するとされる730点をクリアする学生も増えてきています。
英語以外でも、ドイツ語技能検定やハングル能力検定などの外部試験に挑戦して、外国語学習の成果をキャリアに活かすことが可能です。一定の成績を収めて申請すれば、大学の単位として認定する制度もあります。
Blended
Learning
Project
対面授業とonline学習の融合
Blended Learning(BL)とは、e-learning による自己学習と教室での対面授業とをブレンドした新しい学習形態です。学生は online 教材で基礎を学んだうえで、教室での実践練習や発展課題に取り組みます。
この基本コンセプトに加え、本学の BL プロジェクトは、海外大学との双方通信授業、外国語の動画作成、あるいは語学を活かした地域貢献サイトの設立など、ICT を広く活用した外国語教育を目指しています。
こういった挑戦をサポートするデジタルタスク室は、音声ミキシングやブルーバック画像合成といった本格的スタジオ機能を備え、専門のスタッフがコンテンツの作成や学習支援システムの管理を行っています。
本学は北海道で最も古くから英語教員を輩出してきた実績があり、商学部でありながら、現在でも英語教職課程が設置されています。英語教員を志望する学生は、所属する学科にかかわらず、所定の教職関連科目を修得することにより、中学、高校の英語教員免許状を取得することができます。
英語の教職科目は、英語学、英語圏文学、異文化理解、英語コミュニケーション、英語科教育法の各群からなります。3年次からは英語ゼミナールに所属して専門の研究指導を受け、4年次にその成果を卒業論文にまとめます。
卒業生たちの組織する教職研究会は、北海道内の中学、高校の英語教員の一大ネットワークを形成しています。また、本学大学院の現代商学専攻国際商学コースに進学して、英語専修免許状を目指すことも可能です。